第1回サゴリリサーチアワード開催記念展
2023年3月、広島市に「加納実紀代資料室サゴリ」が開室しました。サゴリの資料活用をいっそう促すため、主宰者の高雄きくえ、文化研究者の山本浩貴、彫刻家・評論家の小田原のどかによる「第1回サゴリリサーチアワード」が実施され、これを経てサゴリに小さなギャラリースペースがオープンしました。
リサーチアワードの開催とギャラリーサゴリのオープン、その両方を記念して、リサーチアワードで審査員をつとめた小田原がリサーチアワードに関連する作家を中心に声掛けを行い、企画展「交差点としてのヒロシマを再考する」を開催いたします。
展覧会タイトルの「交差点としてのヒロシマ」はサゴリ主宰者である高雄きくえが編集した書籍に由来します。「広島はひとつではない」「被害と加害の二重性を引き受ける」「〝唯一の被爆国〟というナショナリズム」など、ジェンダーと植民地主義の視点から広島を問い続けてきた加納実紀代、そして加納実紀代資料室サゴリを主宰する高雄の思想を、本展を通じてあらためて焦点化します。
第1回サゴリリサーチアワード開催記念展
「交差点としてのヒロシマを再考する」
◇会期:
日時 2024年9月28日(土)〜10月27日(日)
時間 加納実紀代資料室サゴリの開館時間に準ずる【要事前予約】
◇会場:
加納実紀代資料室サゴリ ギャラリースペース
〒732-0051 広島県東区光が丘2−53
※要事前予約:予約方法はサゴリのウェブサイトをご覧ください
◇参加作家:
Leire de Meer + Mayuko Inui、オヤマアツキ、菊田真奈、高雄きくえ、高川和也+山本浩貴、船木美佳、山下栞、李 和晋、小田原のどか
◇企画・選定・配置:
小田原のどか
◇協力:
サゴリに集うひろしま有志の会、加納実紀代資料室サゴリ
◇作家略歴:
Leire de Meer (they/them) is a Madrid based visual artist. Their work focuses on community building , queer embodiment and narrative fictioning. They use performance, bodily artistic experiences and video art to challenge our perception of ourselves and the cultures we are embedded in.
日本語訳:
Leire de Meer (they/them)
マドリードを拠点に活動するビジュアル・アーティスト。 コミュニティー構築、クィアの身体性、物語のフィクション化に焦点を当てた作品を制作している。パフォーマンス、身体的な芸術体験、ビデオアートを用いて、私たちが組み込まれている文化に対する認識に挑戦している。
Mayuko Inui 乾真裕子
大阪府生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。フェミニズムやクィア理論を手がかりに、自身の身体を用いたパフォーマンスや映像作品を制作している。近年は、民話や昔話におけるジェンダー表象、語り継がれながら変化していく歌や語り物に関心を持っている。
オヤマアツキ
1997年神奈川県生まれ。2022年多摩美術⼤学⼤学院 美術研究科博⼠前期課程彫刻専攻修了。現在は東京、神奈川を拠点に活動。人々の中に自明の事として存在し疑問視されることなく繰り返し用いられるような事柄に興味を持ち、アートという方法論でそれらに介入しようと試みている。主な展覧会に2024年「Saturday Night Once More」 (WALL_alternative/東京)、2024年「SICF25」(スパイラルホール/東京) 2023年「反転するネットワーク」 (MEDEL GALLERY/東京)など。
菊田真奈
広島県出身(b.1986)である菊田は、メディアを通して語られる「ヒロシマ」と、身近な被爆者の語る記憶の差異に関心を寄せ続けてきた。広島原爆死没者慰霊碑、東京の戦災樹木、パリに点在するモニュメント、捨てられた作者不明の写真などをモチーフに、フィールドワークと独自の調査を通して、ドキュメンタリーやコンセプチュアルな形式で、写真や映像の視覚媒体を用いた作品を制作。後世に残すために作られたモニュメントが意味する物語を、今生きている私たちはどう見つめ、考え直し、未来へと繋げていくのだろうか。時間的な距離、ギャップや空洞、不確実性を考察する。
高雄きくえ
広島で1985年、女友だち3人で小さな出版社を立ち上げ、ミニコミ紙「月刊家族」を19年間発行する。その後「ひろしま女性学研究所」と改称し、ジェンダー・フェミニズム・ヒロシマ・コロニアリズムなどの講座・シンポジウム・書籍出版などを手がける。現在、昨春から開室した「加納実紀代資料室サゴリ」をひとり運営。「広島同人誌あいだ」を2018年から年1発行。オイルパステル画は65歳のときから突然、描きはじめる。
高川和也
1986年熊本県生まれ。美術家、映像作家。東京藝術大学大学院修士課程修了。主な展覧会に「MOT アニュアル 2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」東京都現代美術館 (2022)、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート展:社会を動かすアートの新潮流」3331 Arts Chiyoda (2017)、「ASK THE SELF」Tokyo Art and Space (2016) など。
船木美佳
1966年福岡生まれ。主な展示に、2023年「消えないし、」(HIGURE17-15 CAS、東京、OJUNとの展示、企画:船木美佳)、「絶対定点観測へ」(菜香邸、山口、主催:山口現代芸術研究所(YICA))、2019年「砂の本」(Altern`art C&Y、東京)、「FKSK 驚異の小屋_マレーシア編」(MAIX House、Pekan Sauk、ペラ州、マレーシア)など。主なプロジェクトに、大谷芳久氏より寄贈を受けた戦時下資料233冊のデータベース化(2021年〜)、「戦時下資料 ラボ」研究会(計12回、2019年「オランアスリの村 報告展」 マレーシア(MAIX とFKSKによる共同プロジェクト)。
山下 栞
1997年大阪府生まれ、広島県在住。広島市立大学大学院博士前期課程修了(2023年)。自身の経験をもとに、美術と教育の問題を眼差しながら作品を制作する。また、ハラスメントのない学習環境整備のためにさまざまな場所で活動中。主な展覧会に「線引こうとする」(加納実紀代資料室「サゴリ」ギャラリー、広島、2024年)、「美術をもう一度好きになるための予行演習」(タメンタイギャラリー鶴見町ラボ、広島、2022年)、「二回ひねって一度たつ」(クマ財団ギャラリー、東京、2022年)など。
山本浩貴
1986年千葉県生まれ。文化研究者。実践女子大学准教授。2010年一橋大学社会学部卒業、2013年ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。2018年、ロンドン芸術大学博士課程修了。アジア・カルチャー・センター(光州)リサーチ・フェロー、香港理工大学ポストドクトラル・フェロー、東京芸術大学大学院助教、金沢美術工芸大学講師などを経て現職。単著に『現代美術史――欧米、日本、トランスナショナル』(中央公論新社、2019年)、『ポスト人新世の芸術』(美術出版社、2022年)。
李和晋
写真家、映像作家、アーティスト。1991 年東京生まれ。4歳から7歳までを韓国ソウルで過ごす。現在、東京在住。韓国系新来外国人二世という移民としての出自を出発点に、ルーツを探る制作を行う。人と土地との関わりにおいて起こる現象をテーマに、朝鮮半島や東アジアに向き合いながら、歴史的なねじれに含まれる複雑さと豊かさを表現する。また、ルーツを探る過程をトランスナショナルに位置付ける方法を問うことで、大文字の歴史記述に対する私の記し方を探求していく。
小田原のどか
彫刻家、評論家。芸術学博士(筑波大学)。主な展覧会に「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」(国立西洋美術館、2024年)「リメンブランス」(東京都写真美術館、2024年)など。主な単著に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)『モニュメント原論:思想的課題としての彫刻』(青土社、2023年)。共著に『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(山本浩貴との共編、月曜社、2023年)。1985年宮城県仙台市生。
お問い合わせ:
konokunino @ gmail.com(担当:小田原のどか)
第1回サゴリリサーチアワード
第1回サゴリリサーチアワード募集要項
※応募を締め切り、受賞者を発表いたしました。
2023年3月、広島市に「加納実紀代資料室サゴリ」が開室しました。「銃後史」「脱植民地主義」「ジェンダー」「平和表象」「ウーマン・リブ/フェミニズム」「朝鮮・アジア」など多様な角度から言論活動に取り組んだ女性史家・加納実紀代さんの遺志を引き継ぐ「サゴリ」の資料を活用した、新たなアートアワードの募集を、2024年4月1日から開始いたします。
サゴリリサーチアワードは、作品制作のためのリサーチを支援するだけでなく、制作活動を続けるなかで直面する閉塞感などに対し、「加納実紀代資料室サゴリ」を活用して行われる新たなリサーチを通じて現状を変えていこうとするアーティストの伴走者となることを目的とします。
本アワードは、2023年11月に月曜社から刊行された『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(小田原のどか・山本浩貴編著)の編集報酬を資金としています。「サゴリリサーチアワード」の審査は、同書の共同編集者である小田原と山本に加え、「加納実紀代資料室サゴリ」主宰者の高雄きくえさんにもご協力をいただきます。
数あるアートアワードの中でも、リサーチそのものや、「脱植民地主義」「ジェンダー」「平和表象」「ウーマン・リブ/フェミニズム」「朝鮮・アジア」などの明確なテーマに対するアプローチを支援するものは、決して多くはありません。『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』で示した理論的視座を背景に、この国の美術を取り巻く状況のいっそうの変化の呼び水となるべく、「サゴリリサーチアワード」は企画されました。
■応募期間
受付開始:2024年4月1日
締め切り:2024年5月1日
■対象/応募資格
・国籍、年齢、居住地を問いません。
・2025年3月末までに「加納実紀代資料室サゴリ」(広島県東区光が丘2−53)に来室できること
・加納実紀代資料室サゴリはバリアフリーではありませんが、車椅子ユーザーのサポートは可能です
※加納実紀代資料室サゴリに作品制作ができるスペースはありません。あしからずご了承ください。
■助成内容
・制作助成金 10万円
・本アワードを活用して制作したものへの小田原・山本の批評各2000字程度(トークイベントなどに変更も可能です)
■助成金の使途に関して
2025年3月末までに「サゴリ」(広島県東区光が丘2−53)に来室し、資料を活用すること(作品発表の有無は問いません)。
■受賞者発表
2024年6月1日までにメールで本人に通知し、6月中にウェブサイトで発表します。
■選考審査員
小田原のどか(彫刻家・評論家)
高雄きくえ(ひろしま女性学研究所・加納実紀代資料室サゴリ主宰者)
山本浩貴(アーティスト・文化研究者)
■応募方法
①経歴(書式自由)
②加納実紀代資料室サゴリでリサーチを行いたい理由(形式・字数自由)
③作品画像5枚
これらをひとつのフォルダに入れて圧縮(Zip)し、事務局メールアドレスまで送信してください。
■事務局メールアドレス/お問い合わせ
konokunino @ gmail.com(担当:小田原のどか)
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第1回サゴリリサーチアワードには、24名と1団体からご応募をいただきました。審査は2日間にわたって行われ、以下のように受賞者が決定いたしました。
サゴリリサーチアワード大賞
山もといとみさん
特別賞(加納実紀代応援賞)※
井上裕加里さん
陳璟(ちん・けい)さん
※特別賞(加納実紀代応援賞)は、審査の過程で設けることが決まりました。 賞金はなく、サゴリと同じビルにある居住スペースに1週間、無料で宿泊ができるというものです。
以下、山本、小田原による審査員評を記載しております。
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【山本浩貴 審査員評】
「脱植民地主義」「ジェンダー」「平和表象」「ウーマン・リブ/フェミニズム」「朝鮮・アジア」といったテーマは、その重要性に比して、現在の日本——美術界、学術界、その他の分野を問わず——では十分に探究されているとは言い難い。小田原さんと共編した『この国(近代日本)の芸術』では、こうした不足の根源に潜む構造や力学を析出することを試みた。他方、小田原さんもぼくも、上に挙げた諸テーマを扱う芸術作品の制作や発表を実際的にサポートする必要性を痛感している。そのような問題意識から、この「サゴリリサーチアワード」は構想された。
最近は諸アワードの審査に関わる機会が増え、必ずしも「正統な」ルートを経て美術界にいるわけではない自身が基準や視点の複数化に寄与することができればと望み、いくつかの審査に関与している。とはいえ、毎回、そのプロセスは難航し、審査員のあいだですんなりと意見が一致することはほとんどない。実際、今回も、多様な議論が交わされた。だが、高雄さん、小田原さん、ぼくのあいだで最初から合意されていたことは、どの応募者の方も加納実紀代氏が今に残してくれたレガシーと自分なりの仕方で真摯に向き合い、それを芸術の領域で引き受けようとする気概を有しているということだった。
このような種の短評におけるクリシェのようで恐縮だが、ひとつのプランを選出することは本当に困難を極めた。心から、そう思う。いずれのプランについても、これからどのようなかたちで結実するのか、そして展示などの機会があれば、ぜひ足を運びたいと感じた。個人的には、「脱植民地主義」「ジェンダー」「平和表象」「ウーマン・リブ/フェミニズム」「朝鮮・アジア」といった上記諸テーマのあいだのインターセクショナリティの強さに評価の軸を据えた。
植民地支配は、けっして過去の出来事ではない。原爆投下が落とした影は、今もなお世界を覆っている。多くの審査においてそうだが、今回の審査では特に刺激をもらった。応募者のみなさんと共に、ぼく自身も終わりのない思考と探究の旅を続けたい。その道のりは、きっとどこかで交わることになる。そのときを心より楽しみにしている。
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【小田原のどか 審査員評】
第1回サゴリリサーチアワードの審査を終えて
山本浩貴さんと共同編集し、月曜社から2023年11月に刊行された『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』の編集者への報酬を活用し、サゴリリサーチアワードは企画されました。この編集者報酬は、書籍の売上げからではなく、書籍の制作費を捻出するため2022年に開催したオンライン連続講義の売上げから分配しています。オンライン連続講義にご参加いただいたみなさんの力添えが、書籍だけでなく、サゴリリサーチアワードにも生かされています。
オンライン連続講義の実施は、加納実紀代資料室サゴリ主宰者の高雄きくえさんによる連続講義「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマ」に登壇した経験から発想しました。ジェンダーと植民地主義という複合的な視点から捉えた「広島」は、この連続講義を経て高雄さんの編集による論集『広島 爆心都市からあいだの都市へ 「ジェンダー×植民地主義 交差点としてのヒロシマ」連続講座論考集』(インパクト出版会、2022年)となるとともに、「交差点」の意味を持つ加納実紀代資料室サゴリとして結実しました。今回、サゴリリサーチアワードによりふたたび高雄さんとサゴリと関わりを持てたことを、よろこばしく思っています。
加えて、サゴリリサーチアワードに際して参考にしたのは、わたしが2018年に受賞の機会をいただいた「ALLOTMENTトラベルアワード」(https://allotment.jp/travel-award/)でした。ALLOTMENTトラベルアワードは、交通事故により若くして他界した美術家・與語直子さんのご友人たちによってかたちづくられた、制作旅行援助の取り組みです。山本浩貴さんも、こちらのアワードとは深い関わりを持っています。
「若手美術作家が活動していく中で日常生活と作家活動の両立に伴う様々な問題、または作品を継続して制作していく中での閉塞感といった問題に直面する作家に対して、新たな行動の機会を与え、前進する制作の手助けをすること」を目的とするALLOTMENTトラベルアワードにおおいに刺激を受け、サゴリリサーチアワードの募集要項には「作品制作のためのリサーチを支援するだけでなく、制作活動を続けるなかで直面する閉塞感などに対し、「加納実紀代資料室サゴリ」を活用して行われる新たなリサーチを通じて現状を変えていこうとするアーティストの伴走者となることを目的とします」と記しました。
現状を変えていくこと、それは喫緊の課題です。『この国(近代日本)の芸術』の刊行は、飯山由貴の映像作品《In-Mates》の上映中止事件に端を発しています。国際交流基金と東京都人権部により上映を忌避された本作をめぐり、関東大震災の朝鮮人虐殺の歴史を否定し、「人権」や「ヘイトスピーチ」を恣意的に運用する事態に直面し、これに直接的に抗議をするとともに、〈日本〉を規定するフィクションとしての日本美術史を批判的に検証することは急務であると考えました。
「脱植民地主義」「ジェンダー」「平和表象」「ウーマン・リブ/フェミニズム」「朝鮮・アジア」などの明確な主題に取り組むアーティストへの支援は、2024年の日本において、けっして手厚いものではありません。むしろ《In-Mates》が上映を禁じられたように、抑圧され、忌避されていると言っても過言ではない側面があります。意見を持ち、行動するアーティストへの等閑視も横行しています。
こうした状況に抵抗しつづけるために、書籍を編むだけでなく、加納実紀代さんの資料を活用した制作を支援することで、この国の美術を取り巻く状況のいっそうの変化の呼び水となるべく、高雄さんと山本さんにお力添えをいただき、サゴリリサーチアワードを開催するに至りました。
さて、2024年4月1日から5月1日までを募集期間とした第1回のサゴリリサーチアワードは、コレクティブ1団体と24名の方からご応募をいただきました。審査は2日間にわたって行われ、サゴリリサーチアワード受賞者は山もといとみさんに決定しました。また、当初は予定になかったものの、審査の過程で必要が生じ、高雄さんの提案を受け、特別賞(加納実紀代応援賞)を設けることにしました。特別賞は、井上裕加里さん、陳璟(ちん・けい)さんに決定しました。
印象深い応募案は多くありましたが、わたしは審査において、加納実紀代さんが著作を通じて示した、ジェンダー・脱-植民地主義の複合視点を有した提案を重視しました。受賞者はほとんど満場一致で決定したのですが、とくに付記したいものに船木美佳さんの応募案があります。船木さんの提案については最後まで議論がなされたものの、惜しくも受賞とはなりませんでした。東アジアへの複層的なまなざしと資料活用への期待の観点から、個人的に船木さんの制作を応援したいと思います。
2日間の審査を終えて、つくられたばかりのこのアワードに、充実した提案を送ってくださった応募者のみなさんに、心から感謝いたします。加えて、惜しみない協力をいただいた高雄きくえさん、山本浩貴さんに、あらためてお礼申し上げます。中村隆子基金がサゴリ開設に生かされたように、様々な人の思いと行動が交差点のように重なり、わかれ、すれ違い、そしてまた出会い直し、サゴリリサーチアワードにつながっています。受賞された3名のアーティストたちの今後の展開に、ここに言及した(そしてここに言及できなかった)出来事・行動・人から得たものの一端を託したいと思います。
第2回サゴリリサーチアワードは、2026年度に開催いたします。〈原爆後の80年〉の先の広島で、サゴリリサーチアワードを通じて何が見えるのか、この文章を読んでくださったみなさんに、ともに伴走者になっていただきたいと考えます。
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copyright 2024 ©サゴリリサーチアワード