不可視化への抵抗
不可視化への抵抗:「世系と職業に基づく差別」と「日本美術史」に関する研究
本共同研究「不可視化への抵抗:「世系と職業に基づく差別」と「日本美術史」に関する研究」は、従来の「日本美術史」に記述されなかった「世系と職業に基づく差別」に関わる表現や表現者を研究し、トランスナショナルな視点から「日本美術史」の脱中心化を行うことで、社会変革の一歩とするものです。
1995年に国連の「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(「人種差別撤廃条約」)に加入した日本には、長きにわたり、部落差別をはじめアイヌ民族や琉球・沖縄、在日コリアンの人びとに対する差別の問題がありました。帝国主義下の天皇を中心とした新たな身分制度を背景に編纂された「日本美術史」には、差別を抱えさせられた地域や人びとの記述が少なく、「日本をめぐるフィクション」として捉えうるものです。
「日本美術史」という学問に働く力学について、トランスナショナルや脱中心化の方法論を用いて問い直すことは、この国の人権意識の向上をはかる観点からも重要です。なぜなら、不可視化されてきたものを記述し、その記述を厚くしていくだけでなく、なぜそれが不可視とされてきたのかを検討することは、既存の研究に内在する「偏り」を指摘し、その解消を目指すことと同義であるからです。
2001年の国連の公式会合では、人種差別撤廃条約第1条「descent(世系)」との関連から、インドのダリット差別や日本の部落差別が、国際人権法で禁止された「世系と職業に基づく差別」にあたることが指摘されています。しかし、日本政府は、審議の経緯や語義解釈の相違を理由に、これを認めていません。本共同研究により、「日本美術史」における「世系と職業に基づく差別」の表現や表現者をあきらかにすることは、こうした国際的な課題解決にもつながるはずです。
本共同研究では、このような観点から、様々な現場で実践や研究を重ねてきたメンバーが問題を多角的に検討し、書籍、作品、展覧会などでその成果を広く社会に共有することを目指します。
2023年4月
顔ぶれ
小田原のどか |ODAWARA Nodoka|彫刻家・評論家| [研究代表者]
山本浩貴 |YAMATOMO Hiroki|文化研究、現代アート|実践女子大学|
後藤田 和 |GOTOUDA Izumi|日本近現代文学|広島商船高等専門学校|
町村悠香 |MACHIMIRA Haruka|日本美術史、文化資源学|町田市立国際版画美術館|
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佐々木健太郎 SASAKI Kentato|部落史(水平社運動史)|水平社博物館|
[加入順、全7名|氏名の公開は任意としています]
お知らせ
2024年8月30日 更新
2024年4月27日 更新
2023年12月3日 更新
2023年8月3日 更新
サントリー文化財団の研究助成「学問の未来を拓く」に「不可視化への抵抗:「世系と職業に基づく差別」と「日本美術史」に関する研究」が採択されました[▶サントリー文化財団のウェブサイトへ]
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